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たまには、マジメな話を。
これはまったく、本当にまったく偶然だったのですが…。
弊サイト、<The Planet of Green>には、高レベル放射性核廃棄物を扱うストーリーが存在します。オリジナルライトノベルのメインコンテンツ「奇跡」がそれ。地球の各地に長らく埋められていた核廃棄物を、輸送艦隊が地球外へ運び出す話で、その護衛につくのがヤマト…という筋書きです。
現実に、人類の最大の敵は宇宙からの侵略者なんかではなく、驕りが生み出した人類自身の負の遺産…なのではないか。愛の船ヤマトが戦う相手は、本来そういうものであって欲しい…などとカッコ良く考えたのがきっかけだった、ような気がします。
そもそも、放射能による汚染で人類の大半が死滅…というショッキングな出だしが、「宇宙戦艦ヤマト」の最初の舞台設定だった。
であれば、侵略者のもたらした放射能汚染のみならず、人類自らが抱え込んで来た放射性核廃棄物をも除去する。ヤマトなら、そうであって欲しい…などと考えたわけですね。
実は、話せば長いことながら…
話は数年前に溯ります。
その頃、ERIは子育て支援とか、児童虐待防止とか、主に子どもの成長環境における社会問題等に関する仕事に関っておりました。そこであるとき、個人的に偶然目を向けたのが「原子力発電と、それに伴って出る核のゴミ処理問題」。
ある団体が、「子どもたちの未来に原子力発電によって出される高濃度放射性核廃棄物の処理を丸投げしても良いのか!?」という意識啓発運動をしていらした。まあ、それも子どもの成長環境に大きくかかわる問題ではあります。そこで、ふと首を突っ込んで調べてみたら、エラい事実がワラワラ出て来た。
「原発を動かすために使う核燃料の、『使ったあとに出るカスを安全に片付ける最終処分場』が、原発はすでに稼働してン十年も経つというのにもかかわらず『まだちゃんと決まっていない』」…………
びっくりしましたね。
「ゴミ箱がないのに、ゴミを出すつもりなんです」。
しかも、そばに居たら数分で致死量に達するような毒性の強いゴミを、ですよ?しかも完全に見切り発車です。面倒なことヤバイことをすべて未来に丸投げする前提で、原発というのは動き始めた、ってことが分かっちゃった。にわかにはその事実を信じられないくらいでしたよ。
案の定、2011年3月の地震によって図らずもそれが身近な問題となって私たちの目の前に突き付けられたわけですが……。
何年も前から、これを懸念して「知って欲しい」と動いていた人たちもいるのです。ところが、それに対する関心度の低さと来たら、嘆かわしいものでした。
……「知ろうとしなかったのが悪い」と言っているわけではありません。
自分たちの知らないうちに身近に原発が建設され、知らないうちに恐ろしいものとお隣さん同士になってしまった方々もたくさんいます。これはほとんど、告知を徹底して来なかった国の責任です。しかも、高い問題意識を持って多方面から調べてみよう、と思わなければ「知ることすら出来ないように」とても丁寧に誤摩化してある。私だって「まさか安全な処分の方法や処分場が決まっていないのに始めた」とは思っていなかったのですから。
しかも、調べれば調べるほど恐ろしい事実が出てきます。
原発を動かすための核燃料の、最終的なゴミの毒性は何万年も経たなければ消えない。その事実も最初から分かっていたことだった。それなのに「安全です」の一点張りでスタートさせたのです。今回の、1000年に一度とも言われる「想定外の巨大地震」がなくても、原発での放射能漏れに関する深刻な事故は度々起きていました。安全かどうか、一番良く知っているのがそこで働いていた人たちや、反対派の研究者たちです。
そういった方々は、口を揃えて原発の危険性をずっと訴えていらっしゃいましたが、それが公に取り上げられることはほとんどありませんでした。
2009年頃、この原発から出る核のゴミ、高濃度(高レベル)放射性核廃棄物の国内における最終処分場を青★県に作ろうとする動きがあり、それに対して反対運動を起こした方々がおられました。私も当然、その反対運動に賛同し、署名活動に加わりました。大阪万博の火を点したのがたしか国内最初の原発。稼働は実に40年以上に及びます。古くなって使えなくなる原発がぼちぼち出始める頃合いなのですが(2003年に稼働停止・廃炉となった原子炉もありますが、なんとそこのものも含めて)核のゴミはいまだにその安全な処分方法も処分場も、決まっていない有様。
こうなることが、うすうす分かっていたのに踏み切った。
それが、今のこの国の、私たちの目の前にある事実です。
2011年の大地震が無ければ、津波が来なければ。あの原発が被害を受けなければ、もしかしたらこれほどは問題視されなかったかもしれない…… 恐ろしいことに、それも確かです。だとしても、最終処分に関する問題や、それにミスッた場合の局地的健康被害、晩発性障害などに関する問題はいずれ遠からず起きるものです……
誰が悪いの?何が悪かったの?と言い始めたら、そりゃあ…… 際限なく言いたいことは出て来るでしょう。でも、犯人探しをしていても、もうどうにもなりません。放射能とは肚を括って付き合うしかない、それも同時に覚悟しなくてはならない現実。
今まで知らなかったのなら、これから知るようにすればいい。知らなかったことは罪ではありません。ERIのようにある程度事実を知っていたとしても、出来ることは本当に少なかった。原発が無ければ、近代的生活すら制限されていたのかも知れない…それは困る。そんな風に考えてしまう時点で「知らん振りしていた」のとあまり変わらないだろう、とも思います。
だから、「ヤマトが放射性核廃棄物問題と向き合う」——この時期に、そんなお題を掲げた作品をサイトに置いておく。
そのこと自体、不謹慎なのではないか。
ふと、そう思ったりもしました。
じゃ、削除する?
でも、それじゃあやっぱり「クサイものにフタ」してるだけじゃん。そうも思ったのです。不適切なことを言ってしまう危険性があるくらいなら、それ全体に対しての言及を避ける…一見賢いようですがそれでは前に進まない。
私が描いたヤマトのオリジナル二次ラノベ「奇跡」は、放射能汚染問題について『知ろうとして』『理解して』『何が必要なのか訴えたい』そこまで考えての作品でした。残念ながら、伝え切れないうちに現実に恐ろしい事件が起きてしまったわけですが。
そして、宇宙戦艦ヤマトが題材なのに『戦闘を極力避けたい』というのも、我がサイトの基本方針。常に、なにかしらメッセージを乗せたい、というのが根底にあります。
今回、次郎クンの幼少体験の話を書きましたが、そこにも伝えたいメッセージがあります。
『痛みや苦しみを、ひとと比較してはいけない』。
自分より、もっと苦しい体験をした人がいる。だから、自分の苦しみなんてどうということはないんだ、我慢するべきだ。これ、一見美しく思える心構えですが、ものすごい間違いです。
大怪我をした人を見て、『私のはただの切り傷だからどうということはない』といって傷を放置したり我慢していたら、治るものも治りません。心の傷も、同じです。
まずは、自分をいたわり大事にすることから始めなくては心の傷は治らないのです。自分を大切にしてください。そして、よくぞここまで耐えて来た、と自分を褒めてください。
そういうメッセージを乗せたつもりなんです。
しかしまあ。
バトルアニメをベースにした二次創作のサイトなのに、これほどお説教臭くなっちまうのはどうかと思うのですが……
でも、よくよく考えれば、実はこれってすごく自然なことでした。
…だって。
このサイトのメインは、「テレサ」だから——。
今、人類規模の課題を突き付けられているこの国。
その中で、それでも個々の問題に立ち向かうしかない個人。
犯人叩きをしたい気持ちはあっても、誰が悪いのか…とは言うべきことではないし、言っても仕方のないこと。
苦しみや痛みを、個々が出来るだけ軽くしていかなくてはならない。そんなとき、他人の痛みと自分の痛みを比較するのはおろかなこと。
泣きたい時は泣いて、自分を労って、そしていつか、強くしなやかに立ち直って行く、それしかない……。
そのメッセンジャーとして、
ヤマトで一番相応しいのはやっぱり、テレサだよね。
そう思ったので、今回のお話も『奇跡』も、そのまま、ここに置いておくことにしました。
まあ、こんなところがこのサイト<The Planet of Green>のスタンス、ということで… ご理解頂ければ幸甚です。
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