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我知らず、涙ぐんでいたようだ。
ぎゅっと目を閉じたら、睫毛が濡れた。
「…抱いてもいい?」
そうするつもりでベッドに腰かけているのに、なぜか断るように。
「はい…」
彼女を抱いたままその身体を下にして、ベッドに横になる。
雷鳴と稲光が、囁き声を掻き消そうとする。テレサはもう、さっきほど怖がっていなかった。恥ずかしそうに笑って、自らベッドサイドの照明スイッチに手を伸ばす。
「…明るいと、恥ずかしいわ」
雷鳴が轟く。
「暗くしても怖くない?」
「……あなたが…いるから」
俺は笑ってもう一度キスをした。
キスをしながら、彼女のネグリジェのボタンをひとつずつ外す……
「…ねえ、灯りを」伸ばした彼女の手は、照明のスイッチには届いていない。ふと気が変わる。
「駄目。…やっぱり、見たい」
灯りを消しちゃったら、君の身体が見えないもの。
「島さん」
恥ずかしいから……ねえ…お願い。
「こんなに奇麗なのに…?」
何で恥ずかしいんだ…?
君が地球人でないことで何か違和感があるとすれば、それはきっとこの美し過ぎる素肌のせいだ。
細胞の大きさ…?
皮膚構造の違い?
あの雪が、悔しい、敵わないわと言っていた。
薄紅色のパールのような、光沢を放つ柔らかい肌。頬も首筋も鎖骨も乳房も…脚も、爪先まで……どこまで辿っても美しい。人の形をした真珠のようだ、と言ったのは佐渡先生だったか。
少女のような淡い色の乳輪に、ピンク色の乳首。掌に吸い付くような乳房が、何かに期待するようにぷる、と震える。
「……奇麗だ」
またしても不意に、妙な嫉妬が湧きあがる。ああ、これを手に入れたのは俺が初めてじゃないのだと。
だが、その時の相手が誰だろうと、テレサの脳裏にあったのはきっとこの自分だ。…そう無理矢理己を納得させながら。自分でも着ているものを脱いで、横たわる彼女の肢体に静かに身体を重ね合わせた。
雨足が、一段と強くなった。
…サァァ……という音が滝の瀑布のような響きに変わる。
…雨、すごい音だねと言おうと思ったが、その前に堪らず白桃色の乳首を口に含む…
眼の端に、テレサの唇が「あ」と小さく開いたのが映る。
「…あ…の、島さ…ん」
「…ん…?」
掌に…唇に、彼女の胸の鼓動が伝わる。それは温かな肌を通して、まるで小さな動物のように…早い。
これ以上はないというくらい、丁寧に舐めた… 貪りたいという欲求を押し殺し、ありったけの愛情を一つ一つ植え付けるようにして。
「……あの…」
彼女の唇は今は自由だ。どうしてその先を言わないの?
?…もしかしたら。
(…言えないのかも)
それが可愛い、と思ってさらに舐めた、張りのある乳房の麓から頂きまで。頂きをくるりと舌でなぞって、少しだけ吸う。前歯と舌で挟んで、それを何度も転がした…
テレサが言葉ではなく「あ…ぁ」と吐息を漏らす。
「…嫌じゃない?」
乳首にそっとキスをして、顔を上げた。
あの反応は、嫌なんじゃないだろう。そうは分かっていても、訊いてみたくなる。
「…君が嫌だと思うことは、したくないから」
それも本心。
彼女の身体の作りは、先生たちに聞いてある程度は知っている。
内臓器官の一部を除いて、彼女と俺たちの身体は驚くほど共通点が多く、おそらく生殖機能も感覚もほぼ同じに違いない…と。ただ、それは解剖学的構造上の意見であって…
(どうしたら気持ちいい、なんてことは…それこそ同じ星の人間でも千差万別だもんな)
テレサは恥ずかしそうに視線を逸らしている。「わ…わかりません…」
「分からない?」
「あの」
「…嫌だったら、しないから」
「あ…あの」
頬が真っ赤だ。
「嫌じゃ…ありません」
しのつく雨の音も、雷鳴も、もう耳に入らないみたいだった。見つめる俺の視線を避けるように、彼女の目が慌ててあちこちと彷徨う。
「…本当に?」
俺は、自分のしていることが「意地悪かもしれない」とは分かっている。でも答えさせたい。恥じらいながら「すき」と答えるのを確かめたい。
初めてじゃないのなら、これほど狼狽えるというのはおかしな話だが、彼女はどういうわけか真っ赤になったまま目を伏せた。
また雷鳴。稲妻がカーテンの向こうをさらに明るく漂白する。
「…私」
言ってくれるのかな…。
私。
…すごく。
「すごく、…嬉しい。あなたに…こうしてもらえるのが」
言いながら、真っ赤な頬をまた背ける。
「お…おかしい…ですよね」
うれしい、だなんて?
「みっともない…って、思います、恥ずかしい…。でも… あなたのしてくださることが、全部…」
「全部…?」
「…すごく、嬉しいの。抑え切れないくらい…」
そう言った君の艶かしい表情<かお>は、きっと生涯忘れられないだろう…と俺は思った。
愛しているとか好きだとか…言葉にできる気持ちの数倍、数百倍の愛しい感情が俺の理性を揺るがせる。ちゃんと立っていたいのに、足元からすくわれる感じだ。
君がさらに囁いた…
「……私、さっき…」
他の方と…、という話をしましたけど。「でも」
こんなに、…胸が苦しいくらい嬉しい…なんて、思えなかった。
「あなただと思うから… ここに…いるのが島さんだと思うから……こんなに嬉しいの…」
「…テレサ……」
その手が、愛しくてたまらない…というように俺の髪を撫でた——
ベッドに横になったときから期待でいっぱいになってしまった男の部分が、さらに固く主張し始める。…ごめんよ、と思わず頭の中で詫びた。この一物で清らかな君の身体に何かを穿つだなんて、まるで冒涜に当たるような気さえした…
改めて、唇を合わせる。もう我慢できないと言うみたいに、テレサが俺の首に両腕を回してきた。彼女の口の中を、届く限り舌で探る。
中学生の頃、キスの味ってどんな味?だなんてくだらない妄想を笑い飛ばしたことがあった。寸前に食ってたものの味しかしないだろ、と悪友に言うと「お前〜、夢ねえな」とがっかりされたものだ。かといってじゃあ、これからキスします、ってんでレモンかじってみろよ。お互い酸っぱいだけじゃん……俺はそう言って、さらに笑った。しかも、その頃初めて交わした女の子とのキスは、一体どんな味だったのかまるで記憶にない。
けれど…
テレサとのキスは、唾液にまるで媚薬でも入っているのかと思うくらい甘美だった。夕食は同じものを食べている、ああ…なのにどうして? 君のキスは… ほんのり甘い爽やかな蜜のような味がする。これも、君が異星人だからなんだろうか…?
どうして良いか分からない、といったように遠慮がちだった彼女の舌を、少しだけ吸った。こうするんだよ、俺はこうして欲しいんだよ…と教えるように。
ああ、ちょっと苦しいかな。
夢中になると息をするのを忘れちゃう、それは俺も同じだ。
水泳の息つぎみたいに唇を離して、ちょっとだけ笑う。次にまた舌を絡めた時に、片手でもう一度彼女の乳房を包んだ。
テレサの胸は見た目より意外と大きかった。掌サイズだと思っていたら、Cカップはあるんだという。胸郭が薄くて華奢だから、余計意外な感じがするのだろう……
キスをしながら、人差し指と中指の甲であの白桃色の乳首を挟んだ。指をこすり合わせるようにしてそっと摘み上げる。掌は上に向けて…そして、挟まれた乳首の先を親指の腹でそっとこすった。こうすれば、絶対痛い思いをさせることはないから。
彼女の舌がびっくりしたように引っ込んだ。俺はそれを捕まえるように唇を押し付ける。
「…ん…ぅン…」
そっと瞼を開くと、テレサの閉じた瞼が微かに痙攣していた。眉を切なそうにしかめている。
(……ああ、…すっごく可愛い…)
丁寧に、優しく。絶対性急に荒っぽくしちゃ駄目だ。
そう心に決めているのに堪らなくなる。思い切り吸いたい、しゃぶりたいという衝動が突き上げる……
(落ち着けー、俺)
彼女は初めてじゃないから。
そんな言い訳も頭をよぎるが、そうじゃない。初めてじゃないにしても俺とは初めてなんだから、とトンチンカンな説教を自分に垂れ。しばらく、彼女が堪らずに漏らす喘ぎ声を聞き続けた。我を忘れて飛び出そうとするもう一人の自分に、最大限にブレーキをかけながら。
どうなんだろう…
あまり経験がないと、気持ち良いとか良くないとか、そんなこともよくわからない…って聞いたことがある。テレサは…これを、気持ちいいと感じているんだろうか…? (……下の方、触ってみれば答えはすぐ分かるんだが…)
地球人と同じなら、分泌の仕組みや度合いもそれほど変わらないはずだとは思う。でも、彼女の口から訊いてみたかった、なんて答えるのかを。
「…気持ち…いい?」
唇から頬に、首筋にと舌を這わせながら。
指をこすり合わせていると、その間に挟まれている彼女の乳首が固くなる。指を離すと、淡いピンク色だったそれは少し、色を増していて。
だから彼女の返事を待たずに今度は舌でなぞり上げ。
そっと乳輪ごとくわえると口の中でその火照りを鎮めるように柔らかく舐めた…
「…はい… き…もちい… …です」
模範解答みたいにそう言ったテレサに、つい笑ってしまう。彼女はぎゅっと目をつぶっていて、口元を拳で押えるようにしていた…まるで、声を出してはいけないの、と自分に言い聞かせるみたいに。もう片方の腕は、躊躇いがちに俺の背中に回っている。その腕をそっと外させて、手を握った。
そして、そのまま。自分の下腹部へと連れて行く。
「………!」
テレサが驚いて目を開いたから、自然と視線がぶつかった。
(君は、知識だけは豊富だろう。俺の身体の作りも理解しているよね…?)
これを握って欲しいとか、触っていてくれとはまださすがに言えない。でも、この変化は知っていて欲しかった。これを、今から君の中に入れる。でも怖がらないで欲しい、すごくすごく君が好きで、抑え切れないからそうするけど、痛い思いをさせたいなんてこれっぽっちも思っていないんだ……
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