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自分は、こういう知識をどこからどうやって手に入れたんだろう。
そういえば、と頭の隅で考える。
誰に教わったわけでもない。…イスカンダルへ向かう以前の「箱船計画」の頃、興味本位でみんなして漁ったその手の本や映像からだったのか。
(いや… 何だか、本番一発勝負、みたいなもんだったかな…)
色んな子がいたから。
基本は保健の教科書が頭に入っていればそれで済んだ。いかがわしい娯楽作品からはあまり得るものはなかったが、してはいけないだろうこと、女の子が嫌がるだろうこと…は教わった気がする。
だが、…… 愛情をありったけの思いを込めて注ぐ方法は。
(きっと……君から学んだんだな)
死にものぐるいで、君を大事にしたい…、と思うんだ。自分の持てるすべての能力で、君に愛を捧げたいんだ。自分がどうしたいかではなく君がどうしたいのか、必死で探りたい…、と思うんだ……。
薄紅色の下腹部に控えめに茂る淡い陰毛… そこへそっと指を埋める。
「…………」
ちょっと驚いた。それ以上に、彼女の方が困惑した表情で顔を背けている。……脚の間、その淡い茂みの中はすでに驚くほど濡れていたからだ。
「あの…」
また、あの、だ。
笑いを堪えて訊き返す。
「なんだい」
「…こ…こんな風になるのは…、お、おかしいのでしょうか…」
「…いいや」
正直驚いたけれど、…これは、君が…俺をそれだけ好いてくれていると言うことの証拠、だと思う……
「あのね…」
さらに声を落してテレサが囁いた。「…今までも、こんな風に…なることが」
「今までも?」
ああ、いや…恥ずかしい。
そう言うかのようにテレサは頬を両手で覆う。…可愛い。…そうだったのか。
「……キス…してくれた時とか、…抱きしめてくださったりすると…」
「…それだけで?」
こくりと頷く。
…あなたを、好き、と思うだけで…なるの…。
「私、自分がどこかおかしいのじゃないかしら、って…心配になって」
「おかしくないよ」
多分、これと同じさ。
彼女をリラックスさせようと、自分の、もうどうしようもなくなっているものをもう一度触らせた。
「そ…それは…わかりますけれど、私のは」
(わかるんだ……)
ふふふ。
彼女が、妙に饒舌になっている。それはさっきから、俺が片手で彼女のその「おかしいんじゃないか」という部分を指でそっと愛撫しているせいで。時々、多分これが陰核なのじゃないか…という場所に触れると、言葉の端々で艶めいた吐息が”思わず”、というように漏れる。
ここを、舐めたい…というのは、今はやめておこうかなと思った。正直そんな余裕がなかった。いや、一度入れて…落ち着いたら考えれば……
もう、理性のタガが、飛びそうだ。
そぅっと、優しく、しなくちゃ……
探りながら、膣に中指を… 入れた。彼女の名前を、呼びながら…
「テレサ」
「…ぁ…っ…」
指一本でさえ締め付ける道。でも潤沢な愛液のおかげで、少しの抵抗を残しながら指は根本まで滑って行った… ああ、駄目だ、いきなりそんな深く入れちゃ…
こんなに遠慮したことはかつてないくらいだが、しかし慎重に。
(傷つけないように…痛くないように…)
沈めるのは第2間接までと決めて、そっと動かす。
俺の身体に抱きついているテレサが、んっ…はぁ、と声を漏らしてさらに強くしがみついてきた。
「…痛い?」
テレサは首を横に振った。もう言葉では返せない、そういうみたいに。
中指…だけでなく薬指も一緒に入れた。痛いかな…
彼女の表情から、大丈夫そうだと判断して、そっと動かし続ける。
「…テレサ…。テレサ、愛してる… 大好きだよ…」
俺の声に答えてテレサの唇から漏れる音は、まるで嬉しくて啜り泣いているみたいに聴こえた…
その頬と唇をそっと舐めて、唇を覆う、覆って吸って、また耳元で愛してると囁いた。指が飲み込まれている右掌に、愛液がとろりと流れ出す…
そっと指を抜くと、俺の手までが驚くほど濡れている。
愛しさが募って、つい自分の指を、掌を舐めた。彼女が驚いて見ている。
「……あの…」
——君がそう言うと、俺は我に返るよ。
思わず笑いたくなる。「…美味しい」
さっきからずっと真っ赤な頬をしている君が、さらに赤くなった。
むせ返りそうな短い呼吸を繰り返す君の膝の間に、遠慮がちに自分の体を沈めて行く。
「…いい?」
入れても?
頷いたテレサは、唇をちょっとだけ噛んでいた。痛いのは、覚悟していますから…というみたいに…
「…痛かったらすぐやめる。…我慢しないで…言っていいんだからね」
昔は「避妊」というのはひどく興醒めするものだったと聞いている。ペニスが完全に勃起してから、膣に挿入する手前で薄いシリコンゴム製のコンドームを装着。しかも慣れないとその装着自体正しく出来ないとくれば。相手も自分も興を削がれることこの上ないだろう、と想像できる。
その他にも様々な方法があったと言うが、女性の身体に負担をかける類のものは時代を経て自然と消滅して行った。
現代では避妊は男性側の責任ですべてコントロールされる。自然に体内に存在するホルモンと同じ作用の錠剤を月にひとつ、飲むだけだ。それが精子の活動を抑制し卵子にまで辿り着かないようにするのだった。
残念ながら、俺は彼女と結ばれてもまだ無防備に愛し合うことを許可されていない。だから、当然そのいまいましい錠剤を処方されている……彼女が俺の子を宿したとしても、その身体に何のリスクもなく子どもを産めるのかどうか、それがまだ分からないからだった。
ふいにそれが恨めしいと感じた。
俺の子…?
具体的にそんなこと、まだ到底イメージ出来ないとばかり思っていたのに、何故だか妙に胸が苦しくなる……そんなことが起きたら、なんて…幸せだろう…?と思ったのだ。
息が止まりそうだと思ったのは、だから俺も同じだった。
薄紅色の彼女の肩が震えている。乳房が、…薄い腹が強張っている。
(初めてじゃないと言ったのに…こんな)
「……怖い?」
だが、彼女の頬に浮かんだ笑みを見つけ、少しホッとする。テレサはいいえ、と首を振って答えた…
「嬉しいの……」
……嬉しいの、ああ、島さん……
極力痛みを感じさせないようにと華奢な腰を少し手前に引いてやる。その前に、見てみたい…とは思ったが、我慢できなかった。淡い金色の陰毛の間に口を開けるその場所へ、半身をそっと差し込んで行く。
小さく「クチュ」と音がした。多分、俺のもののせいで溢れそうだった愛液が零れ出した音。
まったりと絡み付く温かな鞘に、俺自身が溶け込むように飲み込まれて行く……
「…はぁ… ぁ …んっ」
「痛い?」
そう訊こうと思ったが、意外なほどの心地良い締め付け感に絶句。全部入れてからゆっくり動こうと思ったのに、すぐにでもこすりつけたくなって困った。ああ、どうしよう。
「…島…さ……」
「あぁ…テ…… テレ…サ」
だって、まだ…
入れたばかりでこれじゃ、と頭の隅で何かが呟いた。
突然、テレサが「あああん」と泣き声をあげた。…いや、泣き声じゃなかった。と同時に彼女の中が、急激に狭くなる。
ビクンと腰をふるわせて、全身を硬直させた、……うそだろ。
「…テレサ…?」
呻くような短い呼吸をしながら、テレサがぎゅうっと閉じていた瞼を開いた。
「……ご…ごめんなさ………」
波打つように、まだその内部が激しく痙攣している。
…ちょっと、…待った……!
思わず声が出てしまう。
そ…そんな風に、締め付けられたら……「ぁ…ああっ」
数分経って、背筋の鳥肌が取れたころ。
ようやく外の雨が土砂降りから柔らかい音に戻っているのに気がついた。
(……こんなの、初めてだ)
ちょっと入れただけで。
彼女もそうだけど、自分も……こんなすぐにイってしまうなんて。…そんなに感極まっちゃってたんだろうか………。
というか。
はた、と我に返った。
彼女と、俺たち地球人との相違点は。
……というか、彼女の、持っていた能力は……
仄かな照明にまだ切なく肩を震わせているテレサを見つめた。
彼女があっというまに昇りつめてしまったので、こちらはそれ以上動けない、と思い込んだ。…だって。
彼女、まるで泣いているみたいに… 声を上げたから。
雷鳴が激しくなかったら、すごく……ものすごくハードに愛し合った果ての声、みたいに聞こえただろう……あんな声でイかれたら、それ以上どうして動ける?
そう躊躇している間に、痙攣して締まる彼女の中で、俺の方もうっかりイってしまったと、そんな顛末。
(…彼女は… 精神感応を持っていたよな)
もしかしたら。
ものすごく……敏感…?
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