ざぶとん (1)

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 言葉って、…難しい…。
 いつもながら、そう思います。



 この間。島さんのお友達が何人か遊びにいらして、おもてなししたのですけれど…その時のこと。
 私、とっても嬉しかったので皆さんに出来るだけのことをして差し上げたいって思いました。お母様にお料理をお願いして、自分は母屋と新居とをせっせと往復しました…お料理やお飲物を持って。自分でも何か美味しいものを作れたらいいのですけど、そうもいかなかったものですから。

「手伝うよ」と島さんが言ってくださったのだけど、そんなの駄目。
「せっかく皆さんがいらしてるんですから、島さんはここに座っててください!」
「…そう?」
「はい♪」
 
 それで。何度目かに私がお料理を持って戻って来ると、皆さんがお話ししていたんです…こんなようなことを。


「いいな〜島さんは大事にされてて〜」
「だよね〜。俺なんかいっつも尻に敷かれてるからさ、羨ましいっすよ」
「ぎゃはは… 晶子さん案外怖そうだもんな」
「う(否定できない…)そういう古代さんだって」
「あ?…黙れよ相原っ シッ…」
「なあに?」
「なんでもないよ雪」
「聞こえてたわよ〜?尻に敷いてるって、あたしが?誰を〜?」
「いや、俺たちみんな最初っから勝てなかったもんな、雪には」
「島くんったら失礼ねっ」
「あはははっ」
「…でも、ホントテレサさんっていいお嫁さんですよねえ」
「しゃべり方がね、もう… なんかメイドさんみたいで萌えるのな」
「……なんだそりゃ」
「ほらあ、〜ですわ、とか、〜〜なさって?とか言うじゃないですかあ」
「ああ…(笑)」
「…島さんがああ言えって言ってるわけ?」
「いや?」
「自発的なんですよね」
「ほらほらほらぁ〜〜、そこなんだよぉ(萌えまくり〜)亭主関白って気分にさせてくれるじゃん、あれ」
「は?相原くんそういうの好きなの?…でも、そうね〜、でも彼女のあれは女から見ても可愛いかもね…ふーむ(何を考えてる?)。…?ねえ、彼女、いまだに島くんにも丁寧語なの?」
「二人っきりでいる時も?」
「……うん。まあ」
「何だコイツ、照れてやんの」
「黙れよ(笑)」
「南部も丁寧語だけどなんか意味あんの?」
「俺のはただのクセ(笑)…どうも最近それが染み付いてて(笑)」
「テレサのは元からでしょ」
「……そうだな。最初からずっとあの口調だね彼女は」
「テレサは、島くんが大好きで大事で仕方ないのよ〜」
「……そ…そうなのかな」
「照れんなよ〜、おっかしーコイツ」
「うるせえって古代」
「どうなんす島さん? 尻に敷かれるなんてことないでしょ?」
「……知らねえな(笑)」
「まーたしらばっくれちゃってぇ」
「大体、あの口調でどうやって尻に敷くんだ?そもそも不可能だろ」
「だよな」
 あはははは。


 ——尻に、敷く?


「……なによ、なんでみんなしてあたしのこと見るわけ?」
「えっ?」
「…いや」
「ななななんでもないって雪」
「ほらほらーそういうのが」
「あははは…ぎゃは」
「笑うな相原〜」
「ムッカつく〜。フンだいいですよ、あたしはね、尻に敷いてんじゃありません〜、仲が良いってことだもん!ねっ、進さん?」
「はいはい、お熱いこって」


 ……尻に敷く、って。
 一体、何を…でしょう?


 居間のドアの向こうで立ち聞きしていた…なんて恥ずかしいから言いませんでしたけど、「尻に敷く」って。雪さんは、何をお尻に敷くんでしょう?それが古代さんと仲が良い、ってことみたいですけれど…。

 皆さんがお帰りになってから、私は島さんに訊きました…
「あの。…尻に敷くって、どういうことですか…?」
「は…?」
 島さん、きょとん。
 そして、にわかに笑い出して…。
「ああ、いいんだそんなこと。君には似合わないし…できないことだろうし」
 島さんは笑いながらそうおっしゃいましたけど、私はなんだか心穏やかではありません。…それで…。
「…そんなことないです。…私にだって出来ます!」
 …って、言ってしまったんです。

 それを聞いた島さんが、さらに吹き出して大笑いしたものですから、私、なんだか意地になってしまって。

 それで、あんな変なことするはめになっちゃったんです……




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