カレーライス (2)

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 テーブルに向き合って…カレーライスのお皿が二つ。

「おっと、付け合わせを忘れちゃったな… 福神漬とからっきょうとかさ。サラダがあった方が良かったかな」
 島さんはそんなような事を言っていますが、私はお皿の上のカレーから目が離せません。ふくじんづけ?らっきょう?
「ま、いいか。…食べないの?」
「……いいえっ、た、食べますっ」

 意を決して、私はスプーンを取りました。彼が今にも吹き出しそうな顔で私を見ていることなんか、ちょっとの間気がつきませんでした……
 すー、はー、と深呼吸。

 …と。
「はい、どうぞ」
 目の前に、一口分のスプーンが……。
 

 島さんが、ニコニコしながら私の口元にカレーライスを差し出しています。…これは、…ええと…… 食べなさい、ということ……?
「いつまで経っても食べようとしないんだから」
 ほら、口開けて。
 
 ……ええと、あの…。

 ぱく。

「どう?」
 私の口から戻って来たスプーンで、島さんも一口、自分のお皿から食べました…「あ、やっぱり甘いや」と独り言…。


 えっ。
 ……うそ。

「……美味しい」

 ああ、なんということでしょう……。
 この食べ物は。
 

…私の故郷の果物の味にそっくり。その懐かしさに、うっかり目頭がジンとしてしまいました。

「…く…果物……?」

「はい…!!」
 島さんは(どうしよう…)という顔をしていたみたいですが、その時の私にはその彼の顔は目に入らず。よそって頂いたカレーを全部、島さんよりも早く平らげてしまったんですね……。

「まあ、何にしろ君の気に入って良かったよ」
 私がカレーのお替りをしたので、島さんは本気で笑い出しました。


 その果物は、大きかったの? 
 いいえ? 木の実ですから、このくらい。
 クルミくらいの大きさ?
 …はい。
 で、殼を割ると…
 ええ、こういう果実がとろ〜り、って出てくるんです。匂いはちょっと違いますけど、味はそっくり……!
「……………」
「ここに、甘いゼリービーンズをたくさん入れると、きっと、もっとそっくりになります」
「…え"」
「それを少し冷まして…、そうしたらもっと」
「………」

 島さんがスプーンを落しそうになりました。
 どうなさったのかしら…?

「そうだわ!今度、作って差し上げます!」
「いっ?」
「このカレーを冷まして、甘いゼリービーンズをたっぷり刻んで入れるんです。…ああ、懐かしいわ……」
 想像すると、とっても楽しくなってきました。島さん、あなたにも食べて欲しい。…私の故郷の食べ物の味、知って欲しいわ……

 島さんの目元が、ちょっとピクピクしています。
「えっ、いや、あの…」
「…?」




 金曜日は、カレーライス。

 島さん?
 今度の金曜日には、私が作りますね!

 ——私の故郷の味を、愛を込めて…!

 


                            <多分、おしまい。>
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<あとがき>



 …………想像しただけで、うえ〜〜〜〜〜〜〜。

 甘口のカレーの中に、ゼリービーンズのドロドロが。しかも、室温。 

 島くん〜、「命がけでアナタを愛してくれる」テレサちゃんですよ。
アナタも命がけで、彼女の手料理に付き合わなくちゃ〜(笑)。

 


 しかし、テレサの珍料理。
 いいのかなあ、こんなレパートリーばっかりで。
 ちなみに、今まで我がサイトで登場したのは、

● 酢豚のチョコレート和え(コチラ)←ちょっと長いです。お笑い。最後の方に出て来るw
● ゼリービーンズカレー(このお話)


 おえええ。
 次は何だろう……… (爆)


 金曜日がカレーっていうのは、日本海軍発祥の伝統らしいのですが、今でも海上自衛隊の艦船では船ごとに名物カレーがあるそうですね。ヤマトクルーも多分に漏れず、金曜日のカレーを楽しみにしてる、とかいうのだったら楽しいな、って思って。

 島も、まあ平均的にカレーが好きらしい、ってのはERIが勝手にでっち上げたものですが、ヤマトで航海中の食べ物がマズかったら、士気にかかわりますよね(w)。それだけに、カレーやらハンバーグやらラーメンやらの、日本人のホーム食(子どもメニューか?)は「レストラン・ヤマト」のメニューにもあったんじゃなかろうか、と。「lll」で土門が演習中に配ってたのは「おにぎり」でしたけどね。

 
 さて、よく出て来る「テレサが料理下手だと言うネタ」の出所ですが…

 これしか考えられないんだけど、「ヤマト2」15話の、彼女が古代たちに出した「おもてなし」のテーブルメニューから。

 果物を、切って並べただけ(もしくはただ皿に盛って出しただけ)。

 自然の状態でそのまま出した、みたいな感じ……しかも、その果物の見た目がどれもスゴイ。イモ虫みたいなのや、幾何学模様にボコッと取れるスイカ?メロン?っぽいモノ。でも、斉藤クンは「うめえ」って喜んで食べてましたね。なんといいますか、あの果物をテレサが食べてる図が思い浮かばない…彼女の見た目に全然そぐわない(w)。そのくらい、ある意味グロイ感じの食べ物だったんだよな(w)。

 ユキが料理下手であろうことは、これは…例のコーヒーの件から、であります。が。古代が料理できないんじゃないか、っていうネタの出所は、正直言ってありません(爆)。島が家事の得意な男だ、なんて言うネタもどっこにもナイ(誰ですか、ゴキブリ亭主とか言ってる人は!?)。いやもしかしたら、古代クンだってゴキブ…じゃない、お料理上手なのかもしれないぞ(軍隊では自分の糧食は自分で、が鉄則ですしね、身の回りのことは自分で出来て当たり前、ですから)。

 


 というわけで、来週の金曜日は覚悟してね〜、島くん(爆)!

 

 

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