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ちょうど良かった。
俺も身体洗いたいと思ってたし。
…今日は暑かったね!
ぁん、ちょっと… まってください。
島さんたら、私の言うことも訊かずにシャワースポンジを泡立てて、はい、と私の手にそれを寄越して。
「洗ってくれる?」
「え…」
「背中」
は…はい。
無邪気に笑いながら背中を向けたから、ああ、と私は合点して。彼の背中をスポンジで洗ってあげました。
(良かった… 変な声を出していたのは、聞こえなかったみたい)
………大好きな、広い背中。
過去に受けた傷が、まだ少し残る…あなたの身体。
本当を言うとすぐにでもこの背中に、両腕を広げて抱きつきたい。
…だって… さっきの火照りがまだ引かなくて。
私の脚の間はすごく濡れてしまっていたから…
(…あら?)
ふと、いつもより彼の肌が血色の良いことに気がつきました。
「…日に…焼けましたか?」
「ああ」
島さんは笑うと振り向いて片目をつぶってみせました。
「海底基地にいると、陽を浴びないだろ?なんだか生っ白くなっちゃってイヤだったからさ。あそこ、地球にいるのに宇宙船の中みたいなんだ」
基地内に日焼けサロンがあるから、そこで日光浴さ。海の上と下じゃえらい違いだ。海にいるのにおかしなもんだよ…
そう言って動かした肩甲骨のあたりが逞しく盛り上がって。
見ていたら、胸がドキドキしてきちゃった……
屈託なく話をしている島さんの背中で、私は一人で頬を赤くしました。
可笑しいわ、…変よ、テレサ。
「昼間、庭仕事してたの?」
「…え…?はい」
「そうか… いやに長いシャワーだと思ったよ」
「えっ?…ええ」
まさか、ひとりで恥ずかしいことをしていた、だなんて言えないもの…。
背中をそれ以上こすっていても仕方ないので、彼の身体の前に手を伸ばして、スポンジを渡そうとしました… そうしたら。
「あ」
島さんが、私の両手を捕まえて… ご自分の身体の前へ引き寄せたんです。私の、裸の胸が島さんの背中にぴったりくっ付いて……
あなたの背中に…抱きつきたい。
そう思っていたのが、どうしてわかったの……?
泡だらけのあなたの背中は、温かくて…気持よく滑って。
思わず私、声を出しそうになりました。
「…ああ」
でも、声を出して息を吐いたのは島さんの方……
私の乳房が彼の背中に当たって柔らかく潰れています…でも、乳首だけはどうしても固くなってしまって……
「気持いい」
私も… すごく、変な気分。
お互い泡だらけなので、滑るんです。彼の大きな背中にもたれるようにして、私はしばらく…裸の胸が滑る感覚を味わっていました……
「ねえ、テレサ」
俺、こんなこと教えたかなあ……
島さんが苦笑しました。
何のためにここで泡だらけになっているのか、忘れそうです…… ねえ、あの…… 身体を洗っているだけですよね……?
向かい合って抱きしめ合うと、首筋も肩も胸も…温かい泡で滑って……すごく…いい気持ち——
「……あ」
島さんが、私の両脚の間にするっと右の太腿を入れました。
「…や…」
脚で触っちゃ、…いや?
「…う…ううん…」
島さんの右脚が、私の… 敏感な所に当たって…… 滑るの、押し付けるみたいにして……ああ…
「テレサ…濡れてる…?」
驚いたような声。
だって… だって。
「し…しまさん? ね…」
赤い頬を隠すようにして、慌てて私、言い訳しようとしました……
「…なに?」
「あの、…」
「なんだい?」
「…ど…どうしてここで」
「……いや?」
「イヤじゃないですけど…」
なんでいつも、こういうことって… 突然始まるのでしょう?
「だってさ…」帰って来たら、君がシャワー浴びてるんだもの。
「だからって」
「…ずっと我慢してたんだよ?…俺」
ひと月、帰れないだろ?君に逢えないだろ? ずっと…… しないで、我慢してるんだよ…
私の下腹と彼の間で、膨らんだ百合のつぼみが固くなっています…
そうだわ。
似てる……って、そう思ったのだったわ。
(ああん、やだ………)
恥ずかしくて、私は目を瞑りました。島さんが、私の顎を上向かせて唇をちょっと乱暴に吸います……
(しないで我慢してる、って……。男の人は… 一人ですることがあるって、…雪さんが)
男女の身体の構造の違い、なのよ。
ある程度仕方がないの、…ことに宇宙勤務だと。
責めないであげてね、……あなたを想っていないわけじゃないのよ。
逢っていない間も、身体は子孫を残す用意をするものだから。女性は月に一度(あなたの場合はわからないけど)排卵と月経が、男性は作り過ぎたものをある程度人為的に外に出す必要があるのよ。
雪さんの説明だと、……つまり島さんも。
私と一緒にいない間、お一人で…なさることがある、ということ。
でも…
「我慢してる」って、今。
そう思ったら、急に島さんが今までになく愛おしくなって…… 私。
自然に手を伸ばして、彼のものを……両手に包んでいました。
「テ…レサ」
戸惑うような、島さんの声。
……そうだわ。私の爪…欠けていて、うっかり当たると痛いかもしれない。
「ねえ、テ」
手ではもしかしたら傷つけてしまう。そう思ったので迷わず彼の足元に膝をついて、私はそれを口に含みました。島さんの声が、きゅっと止まって。
…驚かせてしまったかしら……
石鹸の味がして、ちょっと苦い。
…でも…
あなたの…… 匂いがするわ……
あなたが、いつも私にしてくださるように。私の、身体を優しく愛してくださるように…… 丁寧に舐めました、下から、上へ。
「…ぁ……う」
何だか不思議。
いつもは…私が島さんにこうされて、変な声を出しているのに…。今は私の頭はどちらかと言えば冷静で、喘いでいるのは島さんなのですもの。
でも、固くなって行くつぼみを舌で弄んでいるうちになんだか私の方も変な気持ちになってきて。あそこが… また、つきん…って痛くなって。
島さんが震える手で、私の肩を… そして、頭を抱きました。
「…テレサ、…テレサ……、ごめ… 駄目だ、俺」
えっ、と思う間もなく。
吐き出すような息と共に、島さんは私の口からご自分のものを引き抜いたの……
「……!」
固いつぼみの先端から迸る白い液体…… それが私の頬と胸に勢いよくかかって。
(…熱い)
「…ごめん!!」
そんなつもりじゃなかった、と島さんは私の頭を抱きしめました。
「いや、あの…」
ずっとしてなかったから、…その。
口に出したら、…イヤだろうと思って……
「…どうして?… いいのよ……?」
あなたのものならなんでも。イヤなものなんてないのに……。
恥ずかしそうに何度も謝る島さんの耳元で、私は囁いてあげました…
「じゃあ、…泡を落して… ベッドへ行きましょう?」
「え」
「…だって、…私も…」
ずっと、待っていたんですもの……。
私たちは笑いながら、身体中の泡とか、…私の身体についたものとかを洗い流しました。
青いリボンのかかったカサブランカの花束を抱えて、浴室を出て。
「……いい匂い」
「君もだ」
言いながら、うなじにキス。「駄目、待って」
ベッドまで、待って…?
油断すると、島さんに捕まってまた床の上とかソファの上で転がることになっちゃうからです。もう、どうしてベッドまでの何歩かが待てないのかしら…? 私だって、もう…我慢できないけれど…でも、そのくらいは、いくらなんでも。
ベッド脇の私のドレッサーの上に花束を置くやいなや。島さんは私の腰を両腕で引き寄せてベッドへ押し倒したの…
「テレサ…!」
「…大介…」
ああ…… 大介。
その名前は… 魔法の呪文みたい。
そう口に出すと、身体の芯から熱く溶けて行くような気がします……
身体中が… 奥底から解放されるような気がするんです……
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